vol.5 吉田龍太郎さんに会いに行きました。
日比さん:
先日、「タイム アンド スタイル」旭川工場に案内して頂き、原木を加工しているところを見させていただきました。工場にある機械が、うちの機械と似たものが多く、同じような加工をしていると思いました。特に突板を作る工程を見て、そのアナログさに驚きました。手張り作業を丁寧な工程でやっていて、自然な風合いになるように貼る技術のすごさを感じました。その素晴らしい技術を活かして、石と木を融合させながら一緒に良いモノづくりをしたいと思いました。
吉田さん:
関ケ原石材の工場を見て、石をカットする現場を弊社の社員にも見せたいと思ったのです。石と木が似ているところもあるけれども、異なるところがあるからです。特に石を切り出すのにかかる時間です。どれぐらい時間がかかるのでしょうか?
日比さん:
大理石で150㎝高さの石だと10時間くらいかかります。
吉田社長:
10時間もですか!木を切る場合、同じ150㎝の大きさで10秒~20秒ぐらいで済んでいるので、もっと簡単に切れると思っていました。石は硬い分、切断するにあたっての時間がすごくかかる。石のエネルギーは木に比べられないぐらい大きいですね。
日比さん:
今までそのようなことは、考えてもみなかったことです。改めて自分たちがやっていることに気が付きました。お互い工場を見ると、そういう根本的なことも見えてきて勉強になります。
私たちは、日本国内で原石から扱い、加工し研磨をする設備まで持っている会社としては、日本で唯一の企業。これは密かに自信を持っているところです。
原石を加工し、最後まで我々の手で時間をかけてやることにこだわっています。
吉田さん:
こだわっている部分は私たちと全く同じです。加工された板を購入してくることは簡単ですが、外部にそのプロセスを任せることになってしまうので、やっていないのです。外部に委託加工した木材を使うと、例えば、少し薄くしたいと思うけれどもサイズが対応できないのです。
そうやって一番手間がかかる部分こそ、可能性を感じるのです。楽で簡単な方法で材料を買い加工するより、素材のポテンシャルを十分に引き出すことが大事だと思います。
誰もできないこと、関ケ原石材の技術力高めていくことをこれからも続けていってほしいです。
ところで、日比さんが考える「石の幸せ」とは何だと思いますか?或いは石の生い立ちは何だと思いますか?
日比さん:
ある石がどのような過程で、どのような経緯をたどって、ここまで来ているのかに、すごく興味があります。ただ石を採って建物に貼るのではなく、その石が落ち着く場所と形に作ってあげること、これこそが、私たちでやらなければいけないところだと思います。
吉田さん:
家具も木も石も、その場に合うことが大事だと思います。使われている素材は、収まるところに収まるという考え方、『適材適所』ということですね。使われている素材と使われている場が適切であることは、どんなものについても共通しているところではないかと思います。
木の世界では、“木を買わずして、山を買え”という1000年以上伝えられてきた宮大工の口伝があります。例えば、南側に立っている木は南向きに使いなさい、という木の方向に合わせた使い方は、日本の歴史の中で育まれてきたものです。法隆寺や東大寺など1,400年以上建っている建物も、その考えに則って建てられています。
石の世界もこのような方位、方角、向きを考えて石を使うという考え方がありますか?
日比さん:
石の場合は、方向より時間軸で考えています。何億年、何万年規模単位で石の目幅が揃うので、その層の模様を見た上で、それを活かすように使うので、良い石を時間かけて丁寧に扱うことにこだわっています。
もう一つ、石は文化だと思います。文化や技術を守りたいと思っているのです。
企業を運営する上で大変なところはありますが、続けることにこだわりを持つことが大事だと思います。石も木も日本の文化だと思います。
吉田さん:
そうですね。僕も日本の文化は、木と石のバランスがよく取れていることだと思います。
特に日本は、昔のものも含め、木と石が調和し、新しい関係を作り上げながら、建物となってきました。ここに様々な可能性を感じるのです。これからの石の文化はどうなるか気になりますね。その点についてまた次回、日比さんの考えを聞いてみたいと思います。