vol.2 川島蓉子さんが聞きにいきました。
石から建物ができるまで
- 石でできた建物には、石ならではの表情がある
前回の連載では、私たちの暮らしの身近なところに石がたくさんあることを、日比さんから教えてもらいました。以来、私は石が気になって、街を歩くと眺めるようになったのですが、大きな建物は石かガラスでできているものがほとんど。しかも、歴史がありそうな重厚感のある建物の大半は石造りです。どんな石なのだろうと近寄って眺めると、日比さんの言う通り、自然物のなせる技なのでしょう。表面の柄に表情があって面白いのです。
こういうビルの外壁を作っているのが、関ケ原石材の仕事。さて、具体的にどんな風に作っていくのでしょうか。まず、建物を建設するいわゆるゼネコンから「こういうビルを作るにあたって、こういう種類、色柄の石を使いたい」と依頼が来るところから仕事は始まります。と同時に、どの程度の大きさの板にして、どう組み合わせていくのかを決定し、石を加工する作業に取りかかっていくのです。
- 石の加工って面白い!
関ケ原石材を訪れると、2~3mくらいの石の塊が、ごろごろところがっていてびっくり。大きな石の塊は、それだけで迫力満点、どんとした存在感がかっこいいのです。
建物を造るにあたっては、大きな石を加工して板状にする作業を行います。硬い石を裁断するのに使われるのは、直径3メートルが超える円盤にダイアモンドチップを付けた大丸鋸と呼ばれる機械。この大丸鋸を超高速で回転んしながら、ダイナミックに硬い硬い石を裁断していくのです。ものができていく過程は面白いものですが、巨大な石を断裁するのを見る機会は、そうあることではありません。延々と眺めてしまいそうなほど、引き寄せられてしまいました。
表面加工も施されます。ぴかぴかに磨き上げるのか、ざらっとした触感にするのかで、同じ石でもまったく違って見えるから不思議、不思議。あえて凸凹感を強調した粗削りにすることで、石の質感を際立たせたるものなど、関ケ原石材の持っている高い技術に驚かされました。日比さんは「大したことじゃないです」と少し恥ずかしそうでしたが、関ケ原石材には、世界に誇れる技術がたくさんあると感じ入りました。
- 組み合わせ方で異なる表情の数々
もうひとつ興味深く聞いたのは、石の板の組み合わせ方です。最初に触れたように、石は自然物なので、一枚一枚表情が異なります。たとえば本を開いた時のように対称形で組み合わせるのと、右から左へと一方向に組み合わせるのでは、建物の見え方がかなり変わってきます。そういった多くの手法の中から決めた組み合わせで、実際、床に並べてみて検証する仕事も大事です。「建築家やゼネコンの人にお越しいただいて、一緒に眺めながら話し合います」と日比さん。たまたま、ある建物の検証を行っている場を見せてもらいましたが、10m四方くらいの空間に、石が平置きされているさまは、見たことがないユニークな風景です。色柄を緻密に考えた配置になっていて、人工物ではない石の良さが伝わってきます。
何気なく見ていたビルの外壁や内装の石は、こうやって丁寧に緻密に作られていると知って、価値ある存在と改めて思いました。人はそうと意識しなくとも、街中でこういう場面をいっぱい目にしているのだと、大きな発見になりました。