vol.1 川島蓉子さんが聞きにいきました。
石は暮らしのまわりにたくさんある
- 石の世界って深いんです。
「石」という言葉から連想されるシーンは、たとえば川原に広がる石ころ、墓地に並ぶ墓石、日本庭園に置いてある石――日々の暮らしとは、少し遠くにあるイメージです。
でも実を言うと、石はまわりにたくさんある――関ケ原石材の日比順次さんからそう聞いて驚きました。
関ケ原石材は、建築物の外装やインテリアをはじめ、さまざまな石材を扱っている会社で、取扱高は日本一。たくさんのビルを手がけているのです。66年に及ぶ歴史を持っているので、会社の中には石にまつわる知識や知恵がいっぱい。面白いエピソードが、あれこれ詰まっているのです。
このコーナーは、「石を語らせたら凄い」と感じた日比順次さんの話を、ライターである川島蓉子が聞きに行きました。日比さんは、一見すると寡黙そうですが、石について語り出すと止まらない。石博士みたいに何でも知っているのです。
そして、知り合いに関ヶ原石材の話をしたところ、「行って日比さんの話を聞いてみたい」という声があちらからもこちらかも。この連載では、デザイナーやアーティスト、建築家など、さまざまな人の関ケ原石材探訪記もまぜていきます。
- 駅は石でできている!
初回は、本連載の書き手である川島蓉子が日比さんにインタビューしました。
最初に抱いた疑問は、どんなところで石は使われているのかということ。街中の石と言われても、道路はコンクリートだし、お店のインテリアは木が多いように感じていたので。
日比さんから返ってきたのは「駅も石でできているんです」という言葉でした。駅などの公共建築物は、壁、床、階段など、ほとんど石でできているそうです。言われてみると、JRはもちろん、地下鉄の駅も、石、石、石‥‥。それはなぜなのでしょうか。
「石はもっとも丈夫で長持ちする素材。50年くらい経っても擦り減らない、圧倒的な耐久性を持っている材料なんです」。膨大な数の人が行き来する駅は、耐久性が求められる場所。だから石が重用されてきたというわけです。
- 石は何億年もかけて造られたもの
「川島さん、街中の建築をもっと見てください」と日比さんに言われてみると、建築物の外壁もしかりと思いました。街中には、明らかに石とわかるビルってたくさんあることに気づきます。「東京ミッドタウン」や「六本木ヒルズ」の建物の外壁は、関ケ原石材が手がけたと聞いて、石材屋さんの仕事とは、そういうところにあったのかと腑に落ちました。
大きな建物になると、数え切れないほどの石のブロックが外壁を彩るわけですが、それを造るにあたって、関ケ原石材はどんな役割を担っているのでしょうか。
岐阜県関ケ原にある工場には、2~4mくらいはある巨大な石の立方体がごろごろ転がっています。これらは、まさに世界中から買い付けてきた石の数々。「世界50カ国くらいから、350種類くらいの石が揃っています」と日比さん。石ってこんなにたくさん種類があったのかと、博物館を巡るように眺め入ってしまいました。
「石はさまざまなものが堆積して、何億年もかけてできてきたもの」と聞くと、計り知れない時の厚みを蓄えた石に、尊厳みたいなものを感じます。思ったのは「石って凄い、石って面白い」ということ。時の流れを忘れ、工場見学をしてしまいました。
次回はこの続き。石の塊がどのような過程を経てビルになっていくのか、日比さんの話は続きます。